2011年06月30日

review:木下晋×袴田京太朗 うつしみ《6/9、6/16》

review:木下晋×袴田京太朗 うつしみ《6/9、6/16》

木下晋×袴田京太朗 うつしみ
MA2Gallery
東京都渋谷区恵比寿3-3-8
03-3444-1133
6/4(土)〜7/3(日)月火祝休
12:00〜19:00
木下晋袴田京太朗110604.jpg

Susumu Kinoshita × Kyotaro Hakamata "UTSUSHIMI"
MA2Gallery
3-3-8,Ebisu,Shibuya-ku,Tokyo
03-3444-1133
6/4(Sat)-7/3(Sun) closed on Monday,Tuesday and national holiday
12:00-19:00
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ひとつの空間に収められる、懐の深いふたつのクリエイション。
それぞれに豊かな奥行きを感じさせつつ、互いの方向性の差異がくっきりと表出し、しかしその距離感はゆったりとした雰囲気を醸し出し、おおらかな余裕となってそれぞれの風合いをしみじみと味わえるような構成も静かな嬉しさをもたらしてくれます。

これまでも拝見している袴田京太朗さんの作品、それが視覚的にどういうものかは容易に思い浮かべられるほどの立体感と色彩感が備わっていますが、今回の展示でそこで何が行われているか、その表現の主軸がどこにあるかを自然に捕らえることができたように思えます。
1階の扉を開けて正面、1体のオブジェ。抽象性は高いものの、やや人物の立像を思い起こさせてくれるその造形に、そして幾重にも重ねて積み上げられたさまざまな色彩の樹脂版が視覚的にポップに響き、絶妙の塩梅の華やいだ感じ、楽しさも提供されます。表面の削り痕の生々しさも印象的です。


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もう1点で繰り広げられる展開が興味深いです。
小槌を掲げる恵比須様のブロンズの置物がスライスされ、それと入れ替えるようにしてカラフルな樹脂板が組み込まれ、元からあった部分は連ねられて天井から吊り下げられている、というインスタレーション。


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もともとの構造とクリエイションのユニークさとが同時に提示され、ブロンズの内側が空洞であることの無機的な感触や色彩のポップさやなどがひとつの世界に混在させてあって、そこからさまざまなイメージや見所も提供されているように感じられます。台上に置かれる恵比須様の体を成す造形、天井からぶらりと吊るされたもの、その両方が同じ体積であることと、実はそうではないことの双方が表出されているのが興味深く感じられます。加えて恵比須様という賑々しい存在がその展開にユーモラスなアクセントをもたらしているのも面白いです。


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1階のスペースでの木下晋さんの作品、メインのクリエイションと思われる鉛筆画が展示されています。大きな画面に濃厚なリアリティを以て生々しく描き上げられる老人の腕。深く刻まれる皺が巧みな陰影で描き上げられ、広い余白から醸し出される霞むような気配とともに、ひたすらに重く深い世界観が生み出されます。


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人物の頭部が描かれた作品の重厚さにも圧倒されます。
鉛筆画特有の「軽み」によってグロテスクとも言えそうな気配もやや抑えられ、それによって画面に収まる情景との距離が近づけられることで、さらにその雰囲気へと意識が入り込み、さまざまな想いが心を満たしていきます。


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ふたたび袴田さんの作品。
階段の手前と途中に展示された人物の頭部と思しき作品。元が鮭を加える熊の置物とのことで、そこから彫り込まれていって生み出された造形のほどよくユーモアも備わる感じが不思議な面白さとなって小気味よく迫ってきます。


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2階に展示された、木下さんの手帳。日常を書き留めたものが全てのページをびっしりと埋め尽くし、その密度に日常の濃厚さのイメージが重なって圧倒されます。積み上げられる時間の凄まじさにも大いに感じ入る次第、シンプルな行為ながらそのボリュームがそのまま説得力となってあらわれているように思えます。


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袴田さんの作品、ジャコメッティを思い起こさせる細身の女性の立像を彷彿させる造形が。やや落ち着いた色彩で統一されていることも、造形の流麗さと相まってクールな雰囲気が醸し出されます。


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ガラス張りの壁面側には2体の立像が並んで佇みます。


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ギターを構えるどこかユーモラスな雰囲気を漂わせるそれぞれの立像、この組み合わせの妙が堪らなく興味深く思えます。
よくよく眺めていると、木彫部分がもとはひとつの立像だったことに気付かされます。そしてそれぞれにイエローと無色の透明樹脂板が重ねて組み込まれて、さらに樹脂部分はもとの造形と比べて長く積み上げられて、伸びてしまった造形がさらにコミカルな雰囲気を静かに漂わせます。色調の鮮やかさも印象的で、水平の角度で眺めると無色透明の部分に色がなくなってストライプがくっきりと視界に現れてきて、不思議とさらに爽やかな気配も感じ取れます。


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メディアに留まらず、色合いなどの視覚的な刺激や提示される世界観などそうとうにギャップが感じられるふたつのクリエイション、しかし互いの存在を尊重するかのような構成がありがたく、それぞれの風合いにしっかりと引き込まれ、そこから得られるイメージの深さをしっかりと堪能できることに静かな充実感を覚えます。


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posted by makuuchi at 08:30| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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